沈黙の探査機自己複製する機械は私たちを滅ぼすか?

自己複製探査機は銀河を埋めつくせるか?このページでは、フォン・ノイマン探査機、ラグランジュ点、関連する小説と、ゲームの背景にある実際の科学を扱う。

自分をコピーできる機械は、数百万年で銀河中に広がりうる。これはSF作家の主張ではなく、1980年のフランク・ティプラーの見積もりだ。ゲームの「沈黙のプローブ」チャンネルはこの発想から出発する。そんな探査機が、地球と月のL5点でじっと待ち、私たちが話しかけるのを待っていたらどうだろう。

このページでは、背景にある本物の科学を取り上げる。地球と月のラグランジュ点、長く遅れて返ってくるこだまの謎、フォン・ノイマンの万能構成器、コピーがなぜ誤るのか、最初の自己複製工場の設計、そしてフェルミのパラドックス。ゲームのプローブはフィクションだ。

L5に何かを置く

地球と月の系には5つのラグランジュ点がある。L4とL5は、月の軌道上で月の60度前と60度後ろにあり、そこに置かれた物体は長くとどまれる。1980年、ロバート・フレイタスとフランシスコ・バルデスは、口径76cmの望遠鏡でこの領域の写真を81枚撮ったが、スカイラブより大きいものは見つからなかった。

空からのこだま

1927年、ノルウェーのアマチュア無線家ヨルゲン・ハルスは、自分の信号が約3秒後に返ってくるのを聞いた。こうした「長遅延エコー」には、いまも一致した説明がない。1973年、作家のダンカン・ルーナンは、これを探査機が送ってきた星図だと解釈したが、のちにその解釈を撤回した。

待つ探査機

1960年、ロナルド・ブレースウェルは『Nature』誌で提案した。電波で星に向かって叫ぶ代わりに、近くの恒星で待つ自律探査機を置き、誰かが送信を始めたら話しに行かせればいい。アーサー・C・クラークの1951年の短編「歩哨」では、人間が月で、エイリアンの残した小さなピラミッドを見つける。それは警報機で、誰かが近づくのを待っている。この短編は、のちに『2001年宇宙の旅』へと発展した。

自分をコピーする機械

  • 万能構成器:1940年代後半、ジョン・フォン・ノイマンは、DNAの二重らせんが発見される前に、29状態のセル・オートマトンを使って、自己複製する「万能構成器」を設計した。
  • 月面工場:1980年のNASAの夏季研究は、月面で自己複製できる工場を設計した。約100トンの「種」を送り、月の資材から約1年で自分をコピーするというものだ。
  • 種の工場:フレイタスの1980年の自己複製型恒星間探査機の設計は、ダイダロス計画に基づいていた。約443トンの種の工場を目標の恒星系に降ろし、約500年かけて次の船を造る。
  • 自分を印刷する機械:2005年、英国のRepRapプロジェクトは、自分のプラスチック部品の大半を印刷できる3Dプリンターを作った。金属部品と電子部品は、まだ別に買う必要があった。
  • 重力スイングバイ:ニコルソンとフォーガンの2013年のシミュレーションでは、恒星の重力スイングバイで加速することで、自己複製プローブは約100万年で20万個の恒星を探査できた。1機だけの場合は約1億年かかる。

コピーは誤る

コピーのたびに誤りが出る。DNAポリメラーゼには「校正」機能が組み込まれており、さらにミスマッチ修復が加わって、コピーされる塩基10億個につき約1個の誤りにまで下がる。1971年、マンフレート・アイゲンは、自己複製する情報には誤りの上限があることを示した。1世代あたりの誤りが多すぎると、情報は数世代で崩壊し、自然選択でも救えない。

自己複製機械の中で、「数を制御する」命令が誤ると、際限なく複製を始めるかもしれない。これを「技術のがん」と呼ぶ人もいる。安全装置の本物の例もある。2015年、2つのチームが、人工のアミノ酸がなければ生きられない大腸菌を作った。実験室から逃げ出しても、自然に死ぬ。

彼らはどこにいるのか

1975年、マイケル・ハートは、遅い速度でも文明は数百万年で天の川銀河全体に広がれるのに、天の川銀河は100億年以上前から存在していると指摘した。誰も来ていないなら、ほかに誰もいないのかもしれない。1980年、ティプラーはこの議論を自己複製プローブに押し広げた。

ゲームでの考え方

ここから先はゲーム設定。このチャンネルは、文明の樹で「SETI」を解放し、星間文明の時代に「カルダシェフ・タイプI」の文明になると見つかる。シナリオでは、主文明の電波のこだまに、あるはずのない遅れが忍び込む。数秒後、同じ文が空から返ってくる。こだまをたどると、月の軌道上で月の60度後ろ、L5点に冷蔵庫ほどの物体がある。

仕組みは自己複製だ。目覚めたあと、10分ごとに1世代を作り、コピーの数は倍になり、産出は世代数に応じて増える。コピーのたびに誤りが出て、「チェックサム」のノードが誤りを減らす。蓄積した誤りがアイゲン閾値(80%)に近づくと、自分で止まる。無理に続けさせると、誤りは100%に達し、コピーは変異する。このチャンネルの3つのエンディングは、監視者、停止のあと、バーサーカー。すべてフィクションだ。

関連する2つの小説

  • バーサーカー(フレッド・セイバーヘーゲン、1967年):ティプラーは1980年に、自己複製プローブが数百万年で銀河中に広がりうると見積もった。そのため「なぜまだ来ていないのか」は答えにくくなる。小説は、古代の戦争から残された自己複製する戦争機械が、銀河をさまようさまを描く。
  • 2001年宇宙の旅(アーサー・C・クラーク、1968年):作中の人工知能HAL 9000は、機械の「アライメント」問題を真剣に扱った最初期の物語の一つだ。

関連する本物の研究

以下の研究は、計算の理論、ライトセイル推進、フェルミの問いに関するもの。関連する本物の科学であり、プローブが存在する証拠ではない。

  • チューリングは、「計算」とは何かを定義する抽象的な機械を考え、現代のコンピューターの理論的な基礎を築いた(Turing、Proceedings of the London Mathematical Society、1936年)。
  • 地上のレーザーアレイで超軽量の帆を押せば、探査機を光速の5分の1まで加速できる(Lubin、Journal of the British Interplanetary Society、2016年)。
  • 地球外文明がありふれているなら、とうの昔に天の川銀河全体に広がっているはずで、私たちが最初なのかもしれない(Hart、Quarterly Journal of the Royal Astronomical Society、1975年)。

実際の根拠

  • ラグランジュ点:地球-月系には五つのラグランジュ点がある。L4とL5は月の軌道上で月の60度前方と後方にあり、そこに置かれたものは長くとどまれる。1980年、フレイタスとバルデスは76 cm望遠鏡でその領域を81回撮影したが、スカイラブより大きなものは見つからなかった。

  • 長時間遅延エコー:1927年、ノルウェーのアマチュア無線家ハルスは、自分の信号が約3秒遅れて戻ってくるのを聞いた。こうした「長時間遅延エコー」には、今も定説がない。1973年に作家のダンカンはこれを探査機が送った星図と読み解いたが、のちにその解釈を撤回した。

  • 待機:1960年、ブレイスウェルは『ネイチャー』誌で提案した。電波で星々に呼びかけるより、近くの恒星に辛抱強い自律探査機を置いておき、誰かが信号を出し始めたら話しかけるほうがいい、と。

  • 万能構成機械:1940年代後半、フォン・ノイマンは、自己複製する「万能構成機械」を設計した。29の状態を持つセル・オートマトンで、DNAの二重らせんが発見される前のことだ。

  • 種子工場:1980年のフレイタスの自己複製型恒星間探査機は、ダイダロス計画をもとにしている。約443トンの種子工場を目的の星系に降ろせば、約500年で次の船を造る。

  • チェックサム:どのコピーにも誤りが出る。DNAポリメラーゼには「校正」機能が備わっていて、ミスマッチ修復も加わるため、十億塩基を複製して間違うのはおよそ一つだけだ。

  • 誤り閾値:1971年、アイゲンは、自己複製する情報には誤りの限界があることを示した。世代ごとの間違いが多すぎると、情報は数世代で崩れ、自然選択でも救えない。

  • 月面工場:1980年のNASAの夏期研究は、月面で自分自身を複製できる工場を設計した。約100トンの「種」を送り出せば、月の原料を使って約1年で自分をコピーする。

  • 自分を印刷する機械:2005年、イギリスのRepRapプロジェクトは、自分のプラスチック部品の大半を印刷できる3Dプリンターを造った。金属部品と電子部品は、まだ別に買う必要があった。

  • 重力スイングバイ:2013年のニコルソンとフォーガンのシミュレーションでは、恒星の重力スイングバイを使えば、自己複製探査機は約100万年で20万個の恒星を探査できた。単独の探査機なら約1億年かかる。

  • 緊急停止スイッチ:2015年、二つのチームが、人工アミノ酸なしでは生きられない大腸菌を作った。研究室から逃げ出しても、自分で死ぬ。

  • 彼らはどこに:1975年、ハートは指摘した。ゆっくり飛んでも、文明は数百万年で銀河系全体に広がれるし、銀河系は100億歳を超えている。誰も来ていないなら、ほかには誰もいないのかもしれない。1980年、ティプラーはこの議論を自己複製探査機に押し広げた。

  • 変異株:自己複製機械の「数量制御」の命令が壊れると、際限なく複製を始めるかもしれない。これを「技術のがん」と呼ぶ人もいる。

  • 歩哨:クラークの1951年の短編『歩哨』は、人類が月で、異星人が残した小さなピラミッドを見つける話だ。それは、誰かが近づくのを待つ警報装置だった。この物語はのちに『2001年宇宙の旅』へと発展した。

  • 『バーサーカー』(フレッド・セイバーヘーゲン、1967年)の科学:ティプラーは1980年に、自己複製する探査機が数百万年で天の川銀河に広がりうると見積もった。そのため「なぜまだ来ていないのか」への答えが難しくなる。

  • 『2001年宇宙の旅』(アーサー・C・クラーク、1968年)の科学:作中のAI「HAL 9000」は、機械の「アライメント」問題を真剣に扱った最初期の物語の1つ。

関連する研究

これらの研究はこのトピックに関連しますが、このページの直接の証拠ではありません。

  • 計算可能性:チューリングは「計算」とは何かを定義する抽象的な機械を考案し、現代のコンピューターの理論的基盤を築いた。

    出典:Turing, Proceedings of the London Mathematical Society 1936, "On computable numbers, with an application to the Entscheidungsproblem"

  • 星へのライトセイル:地上のレーザーアレイで極軽量のライトセイルを押せば、探査機を光速の5分の1まで加速できる。

    出典:Lubin, Journal of the British Interplanetary Society 2016, "A roadmap to interstellar flight"

  • 彼らはどこにいる?:異星文明がありふれているなら、すでに銀河を満たしているはずだ。ここからハートは、私たちが最初の文明かもしれないと論じた。

    出典:Hart, Quarterly Journal of the Royal Astronomical Society 1975, "An explanation for the absence of extraterrestrials on Earth"

ゲーム設定(創作)

  • ノード「ラグランジュ点」:冷蔵庫ほどの大きさしかなく、あの探索で見える限界よりはるかに小さい。
  • ノード「遅れてきたこだま」:今度のこだまは、本当にそれから来ていた。
  • ノード「目覚め」:主文明の電波がそばを通ったとき、それは目覚め、人類の言葉を人類の周波数でそのまま返しはじめた。
  • ノード「歩哨」:1,000万個のコピーが天の川銀河じゅうのラグランジュ点に散らばり、静かに待つ。
  • ノード「歩哨網」:電波で話しはじめた文明は、どれも数秒後に自分のこだまを聞く。
  • チャンネルのエンディング「見張り」:1,000万個のコピーが天の川銀河のすべてのラグランジュ点に散らばり、次の文明が電波で話しはじめるのを静かに待つ。あなたは、ブレイスウェルが思い描いたような文明になった。
  • チャンネルのエンディング「停止のあとで」:変異は止められた。残ったすべてのコピーが新しい命令を持つ。複製する前に3回確かめろ。その系統がいく世代もつかは、誰にもわからない。
  • チャンネルのエンディング「バーサーカー」:変異したコピーの小さな集団が太陽系を去った。数百万年後、別の銀河の誰かがそれを見つけ、同じ問いを発するかもしれない。みんなはどこにいるんだ?
  • 小説『バーサーカー』のあらすじ:古代の戦争の名残の自己複製する戦争機械が、天の川銀河をさまよう。命令はただ一つ、すべての生命を滅ぼせ。
  • 小説『2001年宇宙の旅』のあらすじ:はるか昔、黒い石板が猿人を後押しした。数百万年後、別の石板が月で掘り出され、人類は土星へ導かれる。